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12/01/2005    watts
僕は音楽について殆ど何も知らない。
バンドをやったこともないし、ライブにも数えるほどしか行ったことがない。

しかし西荻窪wattsが閉店すると聞いて、何かそれは僕にとって特別な出来事のように聞こえた。

月曜、3時に授業を終え、自分の机に戻り、2分で学校を出た。
最寄りの駅まで軽く走った。京都駅から3時20分の新幹線に乗った。
西荻窪駅からwattsに向かって歩いていると、向こうから南雲さんが笑顔で走ってくるのが見えた。


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初めてwattsに行ったのは3年前、長期旅行に行く直前だった。
旅先から送る文章をフライヤーに連載する、ということになり、「メンバーに話通しといたし、一回遊びにきなよ」と山岡さんに言われ、大学の帰りに西荻窪で電車を降りた。改札には山岡さんが咥え煙草で迎えに来てくれていた。

連れられて行った夕暮れ時のwatts前の道路には、様々な人々が集い、酒を飲んでいた。ハンチングをかぶった人が山岡さんに話しかけてきた。
僕にも握手を求めてきた。ツトムさんだった。

訳もわからず階段を降り、手にスタンプを押してもらった。
重いドアを開けると、アンプを通したギターの凄まじい音と、熱気が漏れてきた。
ビールを飲みながら、激しい音と、汗と、人々の突き上げる腕と指を僕は後ろの方で眺めていた。
fourtomorrowのライブが始まった。大学1年の時にインドで出会った山岡さんは、新宿の飲み屋で話していた時とは全く違って見えた。
ああ、これがこの人の「場所」なんだ、と思ったのを覚えている。

僕はその数ヵ月後旅行に行き、一年後に日本に帰ってきた。
大学を卒業するまでに試験を受け、
京都で教員になることになった。
その間wattsに通い、沢山の人々に出会い、話をした。
今僕は京都に住み、高校の教員をしている。



月曜、東京に向かう新幹線の中で、ビールを飲みながら思った。
初めてwattsに行った時に、僕が感じたものは一体何だったのだろうか?
そして僕はなぜ京都に住むことになり、今東京へ向かっているのだろうか?

あの時見たものは、僕がそれまで見たどの風景とも違っていた。
そこは種々雑多な人々の、様々なエネルギーに満ちていた。
何かを生み出そうとし、何かが生まれようとする胎動は、それまで僕の感じたことのないものだった。
僕が漠然と求め、心焦がれ、手に入れることができなかったものを、
そこに居る人々は手にしているような気がした。



僕はバンドをやっているわけではない。
西荻窪wattsでライブを見た、不特定多数の観客の一人である。
僕はあれから自分のための場所を獲得することができたのか、よくわからない。
wattsにずっと集っていた人々が、閉店したことに対して、どんな深い思いを抱いているのかも、よくわからない。

ただ、そこに居た魅力的な人々は、
無防備な衝動を抱え、行き場のない迷いや恐れに満ちていた
僕の背中を押してくれたような気がする。

wattsが閉店した。残念に思うと共に、
心から感謝をしたいと思う。
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