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何日か前の仕事でね。

あ、今更ですけど久しぶりなんで説明しとくと、俺、引越し屋なんですけどね。


その日のお客がね。おっさんだったんですけど。

見た目50歳から60歳くらいの間かな、って感じの。



このおっさんがさ。

すげえよく喋るんですよ。


いやね、俺も人一倍喋るタイプの人間なんで、気持ちはわかるんですけど。

ただね、俺が荷物を運ぶのを止めてまでする話かい?っていうの連発で。

お客様だし、「ちょっと仕事の邪魔なんで」とはまさか言えず、

いちいち話し掛けられる度にあいづち打ってたんですけどね。



で、彼が言うには。

もうすぐ娘と妹が来る、と。


経験上ね。たぶんチャンスのやつ。

俺が困ってるの見かねて「ほら、引越し屋さんの仕事の邪魔しないの!」

って助け舟出してくれるやつ。

頼む、早く来てください!って切に願ってたんですけどね。



ほどなくして2人が到着して。

お客のおっさんと同じくらいの歳のおばさんと、

二十代、場合によっては俺と同じくらいもあり得なくはないお嬢さん。



助かった、ってのもあるけどね。

あの無駄話から解放される安堵感はもちろんそうなんですけどね。

なんていうかその、お嬢さんがけっこう可愛くて。

ちょっとテンション上がるわけですよ。


もちろん仕事中だから、可愛い子が居たからってどうするわけでもないし、

むしろ俺なんてオフのときですら可愛い子居ても何も出来ないわけでね。

それでもまあ、男のサガとして。

いつも以上に頑張っちゃおうかなとは思ったんですけど。



で、まあ俺はバンバン荷物を運ぶわけなんですが。

当然、そのお嬢さんと事務的な話で会話する機会も出来るよね。

これは持っていきますか?とか、さ。




もうね、けっこう早い段階で。

こいつ、すげえ性格悪いぞ、と。



まずね、物凄い上から目線で話を進めてくるし、その言い方もトゲがあってさ。

事前にさ、おっさんの方から持ってくものとそうでないものは聞いてたんですけどね。


持ってくもの運ぼうとしたらさ、

「え!?それ持ってくんですか!?汚いんで引き取ってもらっていいんですけど」

とか言うんだよ!!

まずさ、汚いのはおまえらのせいであって俺に言われても知らねえし、

なおかつ、引き取ってもらって「いい」って!!

いらねえわ!!俺は全然欲しくねえわ!!

つうかこのご時世、むしろ逆に金がかかるわ!!



おばさんの方がね、俺に聞いてきて。

カーペットは丸めた方がいいですか、それとも畳んだ方がいいですか?って。

積みやすいんで、畳んでもらえるとありがたいです、って答えたんですけど。


そしたらさ、横から娘が口出してきて。

カーペットね、ずれないように虫ピンみたいのがたくさん刺してあったんですけど。

「おばさんが手に刺すと危ないから外してもらっていいですか?」だって。


なに?じゃあ、あれかい?

おたくは俺の事、ターミネーターか何かだと?

俺の皮膚、鉄製だと思ってるわけ?

おたくの叔母様と俺の皮膚、素材が違うと思ってるわけ??



もうね、終始この調子で。

一緒に来てた同僚。

直接やりとりしてないのに、俺とそいつのやりとりでムカついたみたいで。

途中から全然家の中に入って来なくなったくらいですからね。




でね。

うちで処分品として引き取らなきゃいけないエアコンがありまして。

普通のじゃなく、窓につけるタイプの小型のやつ。

もちろん取り外しもうちでやる事になってたんですけど。


普通のエアコンであれば、専門の人が来るんですけどね。

窓用のやつなんて素人でも外せますから。まあ、俺が外す事になったんですけど。


ところがね、このエアコン。

もう30年くらい前の品らしく。今のとはちょっと取り付け方が違うんですよ。

それでもまあ、外さなきゃ仕方ないんでどうなってるか確認してたんですけどね。


ちょっと苦戦してる俺を見て。

おっさんが、どれどれ、なんつって俺の方に来かけたんですけど。

娘が言うんですわ、「危ないからお父さんはやめて!」って。


あのね、お客さんの家、6階でね。

エアコンの付いてる窓、開けたらそのまま外なんですよ。

外側も確認してる俺は、つまり半身を6階の高さに投げ出してるわけ。

それを見てさ、危ないからお父さんはやめて、と。



いやまあ、そりゃ確かに落ちたら下手したら死ぬけどね。

俺だってさ、こんなとこで命かけるつもりはサラサラないわけですよ。

完全なる安全な範囲でやってるわけでね。

おっさんも当然わかっていて手伝おうと思ったわけで、

それをさも「野蛮人の仕事だから!」みたいに言われても。

もうカチンとは来てたけどね、そこはやっぱり仕事なんで。

大丈夫です、一人でやりますよって笑顔で答えたんですけど。




で、さて、どうしようかなんてエアコンとにらめっこしてたらさ。

おもむろに、娘が俺に近づいてきて。

「危ないからやめてもらえますか?」って。



バカ?バカなの、ねえ?


いやいや、やめていいなら全然やめるんですけど。

おたくらがいいって言うなら、今すぐにでもやめたいんですけど。

なんなら荷物運ぶのすらやめて、こんなクソ寒い日本からさよならして、

グアムにバカンスにでも行きたいんですけど。



ホントね、頭からマーボーラーメンぶっかけてやりたい気持ちを堪えて。

いや、大丈夫です、ここに足掛けてるから落ちる事はないですからって説明して。


こいつ、もうバカだからさ。説明しても全然聞かねえの。

しかもね、あろうことか、タメ語ですよ。

ついにタメ語使ってきやがって。



俺の作業着の腰の辺りの裾を掴んでさ、離さないんですよ。

そんでもって、

「ねえ、ダメ。危ないからやめて。お願い!ね!?」って。


だから、やめろって言われてもこっちもやめるわけにいかねえっつーの。

で、食い下がって半身を外に出しながら作業続ける俺に。

「お願いお願い、一回だけこっち来て。お願いだから一回だけ降りてきて?」って。


もうね、あんまりしつこいもんだから。

降りてやったんですよ、乗り出してた窓から部屋の方に。

こいつら、親子揃ってどんだけ仕事の邪魔すんだよ!!


で、俺が部屋に入ったのと同時に裾を離して。

空いてた窓を閉めながら言うんですよ。

まるで、イタズラ猫のように。




「はい、もうダメ〜!おわり〜!!」





つうか。






可愛いんですけどッ!!

可愛い過ぎるんですけどッ!!

あと、顔が可愛いんですけどッ!!



ていうか、好きなんですけどッ!!





なんだよそのギャップ!!落差あり過ぎるでしょ!!

その落差で来られるなら、6階とか全然余裕ですから!!


嘘みたいだけど、本当にこのノリでしたから。

最恐のツンからの、三ツ星レストランのスイーツばりの、デレ。

マジでね、「彼女?あれ、俺の彼女だっけ!?」って錯覚しましたから。




しかし、余計なお世話だけどさあ。

しかも、人の事言えたもんじゃないけどさあ。

あれは彼氏出来ねえわ。

あんなに性格キツかったらまず男の方が無理だろうし。


よしんば、恋をしたとして。

あのデレの部分が出れば、まあ付き合う事にはなるかもしれないけどさ。

そのうち出てきちゃいますからね、あの最恐のやつが。

別れるよなあ。まあ、99パーセントの男が別れるよなあ。

顔が多少良くても、あれじゃあ大変だろうなあ。


可能性があるとしたら。

先にツンの方知ってたら、上手くいくかもしれないね。

嫌な部分先に見てたら、後は良くなってくしかないからね。



ちょうど、そういう男、一人知ってんだけどなあ。

(鼻の下を人差し指で擦りながら、上目遣いで)

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